阿部篤志『玉響』(QAZZ-013)

¥3,080(税込)

個人的な話からで恐縮ですが、2005年5月、僕(石田久二)は32歳で4年務めた会社を辞めました。理由は単純に「嫌だから」と、それ以上にあったのが「人生は考え方だけで決まるのか?」を証明してみたかったから。その3月にとある成功者から聞いた言葉ですが、証明というより単にその言葉にすがっていただけかもしれません。しかしあれから20年、その言葉は真実であったと実感しています。もちろんその実感は辞めた3年後には得ていたのですが。

その2005年5月のこと、僕はインド、それも標高3500メートルのチベット地方・ラダックを訪れました。ラダックに飛ぶ前日、首都のデリーで暴漢にあいました。幸いちょっとしたかすり傷と、あとは眼鏡と4万円ほどの所持金を失うのみで済みました。しかし実はその4万円は手持ちのすべてであり、カードでキャッシングした上限の5000円のみでラダックで1週間の滞在を余儀なくされたのです。

最低の安宿に泊まり、広く旅するには所持金が不安。そこで仕方なくナムギャル・ツェモという小高い丘に登り、5日間で般若心経1000巻をあげることにしました。お金がなく退屈だったから。その5日目、820巻目に僕は悟りを啓きました。

大丈夫なんだ。

それまで白黒の世界がカラーに、二次元が三次元に変わるかのような衝撃で、その根拠のない感覚が僕にとってのすべてであり、やっぱり何があっても大丈夫な20年を過ごしてきました。

2023年8月28日、仲間たち14名で再びラダックを訪れ、その場で般若心経を21巻唱えることにしました。

30分ほどで唱え終わった直後、仲間の一人、としさんからこう言われました。

「Qさん、ありがとうございました、原子核が見えました」

その言葉を聞いた瞬間、2005年の体験の意味を理解しました。点と点が線になり、面に広がるように。としさんが原子核と呼んだのは、おそらくこの宇宙の最小単位を意味するのでしょう。般若心経はお釈迦さまの一番弟子である舎利弗が、観音菩薩より「空」を教授される物語。

色即是空、つまり「色」と呼ばれる物理的世界の本質は、目に見えない情報的世界「空」であると。その「空」こそがとしさんの言う原子核であり、お釈迦さまの悟りに通じるこの世の成り立ちだったのでしょう。

本アルバム『玉響(たまゆら)』のジャケットデザインは、ナムギャル・ツェモで見た真実の世界をイメージし、そこに「8つの玉」を構成しました。8つの玉は人間のエネルギーの集結部チャクラを意味し、ピアニストの阿部篤志さんに8つを活性化させる音を吹き込んでいただきました。

それぞれには密教の神仏と役割が対応します。第1チャクラは稲荷大明神で生命力、第2チャクラは地蔵菩薩で健康、第3チャクラは不動明王でお金、第4チャクラは観音菩薩で愛情、第5チャクラは文殊菩薩で理性、第6チャクラは弥勒菩薩で直感、第7チャクラは釈迦如来で悟り、そして第8チャクラは大日如来で宇宙を。

ジャケットのイメージ(ヤントラ)そのものに活性化のエネルギーが封入されていますので、それを見ながらご鑑賞いただくと思わぬ効果が得られるかもしれません。鑑賞方法は自由です。ガッチリと聴き入っていただいても、コーヒータイムのBGMでもOK。もちろん瞑想やヨガにご使用いただいてもいいし、ピンポイントにチャクラを活性化させる用途でも大丈夫です。

なお、「玉響」とは字の通り「玉(エネルギー)の響き」を連想させますが、もともとは勾玉が触れ合う微かな響きのことで、転じて「一瞬」や「しばし」のような、刹那な時間を意味します。まさにこの一瞬こそが最小単位としての世界のスタート。玉響を耳した瞬間からあなたにとっての新たな世界が始まります。

1.稲荷大明神:生命力〜ハ長調 

結合を意味する。男女の結合、生命の結合、大地との結合。地球の中心から湧き出るエネルギー。私は常に中心であり、すべての源。私は命であると同時に、命は私。創造主である私は、中心から全体に向かってこの宇宙を形成する。常に生まれ変わる私なる存在。さあ、歩き始めよう!

2.地蔵菩薩:健康〜ニ短調

手は癒しの象徴。人は古来より患部に手を当てることで、治癒してきた。それを手当と呼ぶ。私には癒しの力があり、触れるものすべてが元に戻る。これを元気と呼ぶ。私は何一つ足す必要もなければ引く必要もない。私はすでに完全なる存在であるから。まずは下腹部に手を当ててみるとわかるはずだ。

3.不動明王:お金〜イ長調

チカラは腹に宿る。エネルギーは腹から吸収されるため、腹を鍛えることがパワフルになる絶対条件だ。モチーフはまさに胃袋。怒りの感情は自らを守るために必要だが、胃が丈夫でなければ負けてしまう。さらに胃に吸収されるエネルギー(食べ物)はお金によって運ばれる。お金を増やすためには、よく食べよく飲み、よく消化すること。

4.観音菩薩:愛情〜変ホ長調

心臓は常に動いており、生きるエンジン部にあたる。心臓を自由にコントロールすることが難しいように、心も容易には自由にはならず、委ねるしかない。それだけにトラウマやカルマなど、自分を超えた情報は心臓に集中し、心を支配する。心を取り戻す唯一の方法は許すこと、受け入れること。善悪を超克したノンジャッジメントの世界にこそ平穏は訪れる。

5.文殊菩薩:理性〜変ロ長調

言葉が社会を創る。人間がここまで発展したのは言葉があったからだ。人と人の間をつなぐのが言葉であり、言葉が巧みな人は世界をより良く生きることができる。しかしそれは単なる饒舌を意味しない。人の内面を観る、そこから自然に湧き出る言葉。それを真言と呼ぶ。真言は愛の表出であり、人間社会の本質が愛であることを物語る。

6.弥勒菩薩:直感〜ト短調

私の直感は常に正しい。そうでなければ人は一年も生きていられない。情報が過多となればなるほど、最後のよりどころは直感に戻る。目の奥に宿る光を刮目せよ。それが直感の源泉であり、正誤・善悪の判断がなく、ただ全肯定があるのみ。それを真実と呼ぶ。もう一度言う。私の直感は常に正しい。

7.釈迦如来:悟り〜嬰ヘ長調

悟りとは差を取ること。人もこの世界も所詮は無味無臭な一つの原子核に過ぎず、最先端の物理学では量子、お釈迦さまはそれを「空」と呼んだ。善も悪も、快も不快も「思い」に色付けされた幻想でしかなく、両端の概念にさえも差は存在しない。つまり創造主としてスタートすることで世界は思いのままになる。

8.大日如来:宇宙〜無調

私はただ存在するだけでいい。すでに完成された生命体であり、宇宙そのものであるから。やりたいようにやればいい。むしろ生きている唯一の目的は、やり尽くすことにある。制限なる概念もない。私は宇宙。宇宙は私。今思っていること。それが私の唯一の存在意義である。

9.星に願いを

ボーナストラックとして。このあまりにも美しい一曲があなたのエネルギーを整える。

ピアノの阿部篤志さんはQAZZレーベルでも多数の作品を吹き込んでおられますが、今回はかなり難易度の高い依頼になったのではと思います。一般的なピアノの鍵盤は88であり、それを8等分し、それぞれの音域を中心に8つのモチーフをご準備いただいた上で、録音当日は即興演奏となりました。

例えば一曲目の「稲荷大明神:生命力〜ハ長調」は、最低音域を中心に力強く荘厳な雰囲気であったのに対し、八曲目の「大日如来:宇宙〜無調」は神秘的で透明感ある演奏となっております。それぞれのチャクラの意味するところを的確に音とし、結果、見事な作品に仕上がりました。
(石田久二)

1.稲荷大明神:生命力〜ハ長調 
2.地蔵菩薩:健康〜ニ短調
3.不動明王:お金〜イ長調
4.観音菩薩:愛情〜変ホ長調
5.文殊菩薩:理性〜変ロ長調
6.弥勒菩薩:直感〜ト短調
7.釈迦如来:悟り〜嬰ヘ長調
8.大日如来:宇宙〜無調
9.星に願いを

阿部篤志 piano

レーベル:QAZZ
企画:石田久二
制作:株式会社フロムミュージック
発売元:まるいひと株式会社

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